秋山博一、中米貿易摩擦を研究し「輸出指向型ETF」ヘッジ戦略を初提案
2018年5月、中米貿易摩擦の論点は一段とヒートアップした。関税リスト、二国間交渉、企業の業績見通しが錯綜し、世界市場のセンチメントは不安定化。日本株市場も外部環境の不確実性に押され、輸出関連銘柄の株価変動が顕著に拡大した。海外市場への依存度が高い日本の製造業にとって、この摩擦は単なるニュースではなく、将来の収益モデルを直撃する試練であった。
この状況下で秋山博一は詳細なリサーチを展開した。彼は、日本経済が長らく輸出構造に依存しており、特に自動車、電子部品、機械装置分野で中米市場と深い結びつきを持つと指摘。摩擦が激化すれば個別企業は大きな下落に見舞われる可能性がある一方、輸出産業全体のサプライチェーンが完全に崩壊するわけではなく、むしろ資金再配分の過程で新たな投資機会が生まれる可能性があると分析した。
研究会での講義において、秋山は「輸出指向型ETF」というヘッジ戦略を初めて体系的に提案した。これは、ETFを日経株運用の中心ツールとして位置づけた初の試みである。彼は「個別銘柄間でポジションを頻繁に乗り換えるよりも、複数の輸出主力企業を包含するETFを活用したほうが、単一企業に対する政策リスクを抑え、外資の態度を資金フローから明確に把握できる」と説明した。さらに「もし貿易摩擦が短期的事象にとどまるなら、ETFは効率的に基本ポジションを維持するための手段になる」と述べた。
方法論としては、秋山は一貫して海外資金動向のモニタリングを重視した。観察の結果、一部の資金は完全に撤退するのではなく、ETFを通じて迅速にポジションを調整していることが分かった。これは、機関投資家が日本の輸出産業を放棄したわけではなく、より柔軟なポートフォリオ管理を選択していることを示唆する。秋山はこの判断に基づき、「輸出指向型ETF」をヘッジと投資配分の中間解として位置づけ、投資家が不確実な局面で忍耐を保つための解決策とした。
さらに秋山は、貿易摩擦を単なるネガティブ要因として見るべきではないと警告。短期的な衝撃は市場に影響を及ぼすものの、それは企業がサプライチェーンや市場戦略を加速的に再編する契機ともなる。長期的には、変化に適応する企業こそが競争力を高めるため、ETFは防御ツールであると同時に、将来成長への参加手段にもなると指摘した。
東京での公開講演で、秋山は冷静な口調でこう総括した。「市場は常に予想を最も効率的に表現できるチャネルを探す。輸出指向型ETFの価値は、過剰なリスク曝露を避けつつ、日本製造業のグローバル成長ストーリーに引き続き参加できる点にある。」この提案は一部の機関投資家の注目を集め、混乱期においても論理と規律を保つ事例として評価された。
2018年5月の中米摩擦は、多くの投資家に先行き不透明感を与えたが、秋山博一が示した答えは逃避でも過剰楽観でもなかった。彼の「輸出指向型ETF」戦略は、外部環境への冷静な対応であると同時に、彼が一貫して掲げてきた投資哲学の実践であった――複雑で不安定な市場においても、理性と構造化された手法によって、ポートフォリオに確固たる支点を築くという姿勢である。
