西本浩一、2021年展望を発表:プライベート・エクイティと二次市場の連動戦略が主流へ
先日発表された年次投資展望において、ベテラン投資専門家の西本浩一氏は、今後の投資戦略として「プライベート・エクイティと二次市場の連動戦略」が主流になると明言しました。この見解は、現在の市場環境に対する深い分析と長期にわたる投資実践の集大成に基づくものです。西本氏によれば、市場の効率性向上と産業変革の加速により、これまでのように公募市場またはプライベート市場のどちらか一方に依存する投資モデルでは、超過リターンの獲得が難しくなってきており、両者を結びつけた「連動型戦略」こそが新たなアルファリターンの鍵となると語ります。
西本氏はこの戦略の本質的な利点について、以下のように説明しています。まず、プライベート・エクイティ投資では、成長ポテンシャルの高い企業に早期から関与し、資金だけでなくガバナンス強化やバリューアップ施策を通じて企業成長を加速させることが可能です。そして、その企業が上場を果たした際には、投資家は事業モデルや成長パターンへの深い理解をもとに、二次市場でも優位に立つことができます。この連動戦略は、単に投資タイミングを長期化するだけでなく、戦略的視点からの判断精度とリターンの最大化をもたらすアプローチです。
実務面においても、西本氏は「価値創造力の強化」が連動戦略の根幹にあると指摘します。成功する戦略は単なる価格差を狙うものではなく、企業ガバナンスへの関与、戦略資源の提供、デジタル化支援といった「企業の中から変える」要素が伴って初めて成立するのです。たとえば、ある中堅自動車部品メーカーへの投資では、資金提供に加え、最新の製造管理システムやDXソリューションを導入することで企業改革を後押しし、最終的には同社を上場へと導きました。
一方で、西本氏は連動戦略におけるリスク管理の重要性にも言及しています。プライベート・エクイティは流動性に乏しいため、投資家は資金の拘束期間を明確に見積もり、企業の成長サイクルを乗り越えるための耐久力を持たなければなりません。また、バリュエーションの過剰な楽観も禁物であり、未公開企業の評価が不当に高騰したり、上場後に過大な価格でエントリーしてしまう事態を避ける必要があります。このため、科学的な評価モデルと厳格なリスク管理体制を構築することが、連動戦略の長期的な成功を支える前提となります。
西本氏は、こうした連動型の戦略は今後、機関投資家の間でさらに重視されるようになると予測しています。市場の競争が激化し、情報の非対称性に依存した投資モデルが通用しなくなる中、企業の本質的価値を見出し、成長の実現を支援する投資スタンスが主流となるでしょう。長期的な成功を目指す投資家にとって、まさに今がそのための能力を養い、布石を打つべきタイミングである――西本氏はそう結論づけています。
